日本とイランを裂く昔イギリス今トランプ

米フロリダ州のパームビーチにある空港に到着した、ドナルド・トランプ米大統領(2019年4月18日撮影)。(c)Nicholas Kamm / AFP
アメリカはイランに引き続き経済制裁を行い、トランプ大統領はイラン石油の輸入禁止を唱えていたが、このほど日本を含む各国への除外措置が終わりを告げる。
過去のあの時、アメリカの意があったからこそ日本とイランの歴史は良いものへと繋がって来ていた筈なのに、そう考えると非常に残念に思う。
海賊と呼ばれた男
第二次世界大戦後イギリスの影響の下にあったイランは、独立していたものの石油資源はイギリス資本の下にあった。そのため最も必要な国民へは石油貿易の恩恵が行き渡っていなかった。
そこで1951年、イランのモサッデグ首相は石油の国有化を断行し現状打破に踏み切る。イギリスはこれに対し軍艦を派遣し石油取引に来ればタンカーを撃沈すると国際的に知らしめた。そのためイランと取引する国は無く経済制裁は成功しつつあり、イランとイギリスの関係は冷え込んでいった。
1953年(昭和28年)3/23 日本の一中小企業であった出光興産の日章丸が、神戸港を極秘裏に出向した。ここまで石油取引の実現に向け水面下でイラン側と交渉を続けていた出光は、国際法規に反せずに両国にとって正しいことを行おうと画策していた。そのうえで、リスクも承知でイギリス軍艦の待つアバダーンへ船を送り出したのだ。
イギリスを筆頭とした連合国軍による占領下の日本において、これらの行為は非常に大きな危険を孕んでいた。そんな『正気の沙汰ではない』とも言われるほど大胆な行動を取ったのが出光興産の創始者である出光佐三、『海賊』と呼ばれた伝説的人物である。
世界中のマスメディアが「イギリス海軍に喧嘩を売った」と報道し、国内でも連日新聞で大きく報道され渦中の人となっていた。
5月、出光佐三の期待通り日章丸はタンクに石油を満載して無事に航海から戻った。非武装の民間貿易船がイギリス軍艦と対峙するという一触即発の危機を切り抜けたのだ。
当然石油メジャーは出光を訴えたが行政処分は免れた。これには世論はもとよりアメリカ合衆国の影響が大きく、アメリカがイギリスによる独占に不満を抱いていたため黙認を決め込んだのだった。裁判でも出光側の正当性が認められている。
トランプ政権の経済制裁
2018年11月にアメリカのトランプ大統領は経済制裁としてイラン産石油の輸入を禁止しているが、現在まで日本を含む8カ国(中国、インド、韓国、トルコ、イタリア、ギリシャ、台湾)は除外されていた。同年5月2日に180日間の猶予期間は終了するが、トランプ大統領は適用除外の打ち切りを発表した。「この決定は、イランの原油輸出をゼロにすることを目指すもので、これにより同国の政権の主たる歳入源を断つ」と表明している。
トランプ政権はイランへの圧力を強めていて、4月上旬にはイランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」をテロ組織に指定している。
イランに於ける報道と原油価格
イランメディアによると、IRGC(イスラム革命防衛隊)海軍司令官は「ホルムズ海峡の使用禁止措置がなされた場合は海峡を閉鎖する」と警告している。
原油価格は上昇を続け、アメリカ原油先物も66ドル目前まで上がっている。これらの状況はアメリカとイランのみならず日本も含む各国に深刻な影響を与えるだろう。中国にとってもダメージは大きい筈だ。
現在、日本とイランはビザ無し交流を結んでいる。イラン国民は日章丸事件の時から親日度は高まり、両国は理想的な友好関係にあったといえる。その日本とイランの絆が、この先どう変化してゆくのだろうか?
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