カルロス・ゴーン氏とマクロン大統領の密約

(画像はCNNより)

カルロス・ゴーン元CEOとグレッグ・ケリー代表取締役の逮捕劇から、2月に交わされたマクロン大統領(フランス)とゴーン氏による日産とルノーの不可逆的な経営統合の密約が浮かび上がっている。

カルロス・ゴーン氏の犯した罪

まずカルロス・ゴーン元CEOの犯した罪を再確認しよう。
以下のうち1つ目で逮捕に至ったが、2~3つ目についてはこれから問われると思われる罪だ。

 

1つ目は、金融商品取引法違反だ。有価証券報告書への虚偽記載でなどがこれにあたる。
2つ目は特別背任罪で、自己の利益を図り会社に損害を与えた罪だ。
3つ目は所得税法違反で、所得額を虚偽申告し本来支払うべき所得税から逃れたもので、今回のケースは極めて悪質と判断される可能性が高い。

かなり多くの不正を行ったようだが、まずは自身の報酬を過少申告したことだ。49億8,700万円として記載していたのに実際には99億9,800万円と倍以上の金額を受け取っていたのだ。
他にも、日産が購入した東京及び海外の6カ所に上る複数の住宅を無償で私的利用している。
また、株主総会で決められた他の取締役への報酬総額30億円が実際には20億円程度と少なく支払われていて、その一部がゴーン氏に流れていた可能性が疑われている。
なかでも悪質なのは、日産の投資資金の私的流用だ。日産60億円をかけてオランダに設立した投資目的の会社が実際には全く投資活動を行わず、その資金の一部は邸宅購入などに流用され判った額だけでも20億円という。
これは日産の資産やビジネスの可能性を増やす機会を喪失させたと言えるので、他の株主や経営陣からすれば相当な憤りだろう。私が株主ならここを追及してゴーン氏を訴えたくなるだろう。

また、一昨年再婚した夫人との結婚パーティーはベルサイユ宮殿で行われたとの情報もあり、どこから動かしたお金で開いたのかも気になるところだ。
この様子だとまだまだ他にも出てくるかもしれない。

ここでカルロス・ゴーン氏日産ルノー(フランス)について述べよう。

ゴーン氏とマクロン大統領日産ルノーの関係

なぜマクロン大統領ゴーン氏と民間の自動車企業の密約を交わすのか。その理由はフランス政府がそれぞれの自動車企業に深く関わっているからだ。

カルロス・ゴーン氏日産のCEOとルノー(フランス)のCEOを兼任していたが、ルノーにはフランス政府の資金が投入されており持ち株15%を超える主要株主となっている。

日産は苦しい経営状況だった1999年、ルノーから6,430億円の援助を受け経営を立て直した。
その際ルノー日産の株主となりその比率は36%を超えた。それから43.4%へと比率は上げられ、筆頭株主となったルノー日産の経営に多大な影響力を持つようになる。
この年にカルロス・ゴーン氏日産COO(最高執行責任者)となり、2001年CEO(最高経営責任者)となる。その後、2005年からルノーのCEOも兼任する。
そして2017年3月に日産社長とCEOを辞任会長職に就いた。

カルロス・ゴーン元CEOの手腕と企業の底力によって経営はV字回復を遂げたが、水面下では日産はカルロス・ゴーン氏ルノーによって密かに浸食されていたのかもしれない。

 

株式保有率や価額は

ここで少し株式保有率をみてみたい。

日産ルノーの株式を保有するが、15%程度であり大株主ではあるもののその経営には直接的な影響力を持たない

企業の利益は株主に還元されるため日産の業績による収益はルノーはじめ株主の利益へと繋がる。
参考までに2017年度の中間・期末配当合計は57円なので、1,831,837千株を所有するルノー年に1,044億円以上の配当利益となる計算だ。

決算月は3月なので、これからどう株価が動くかは不明だが、一連の騒動で一時的に株価は下がり、ゴーン氏逮捕の前週から比べると50円下がっている。ルノー資産の減少は915億円だ。(今だけの計算上の話)

(画像はgoogleから)

ルノーを除く大株主は日本トラスティサービス信託銀行=5.2%、チェースマンハッタンバンク=3.37%、日本マスタートラスト信託銀行=2.54%、日本生命保険=1.28%、JPモルガンチェース=1%、ステートストリートバンク=0.81%、モックスレイアンドCo.=0.81%など。どれもルノーとの差は歴然だ。

日産がどんなに自社株買いをしてもルノーとの持ち株比率を反転させることは難しそうなので、株価が下がっても好機にはなりそうにない。
仮に第三者がルノーに次ぐ大株主になるとしても日本トラスティを抜く219,511千株以上保有が条件となり、11月22日終値954.1円なので2,094億円の資金が必要だ、そこにそれだけのメリットがあるかは疑問だ。

ゴーン氏と日産の行く先は

日産がこのタイミングで内部告発に踏み切ったのはルノー=フランス政府とのこれからの関係に嫌気がさしたからだけなのだろうか。11月22日の臨時株主総会でゴーン氏は会長職を解任となり、一つの紐が解けた様にも見えるが、日産が縛られているそれは一本だけではないだろう。

誰が利益を甘受するのか、日本を代表するほどの大手企業がどの方向に進むのか、その行き先を見ていたくなる事件だ。

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